短編小説 魔道書
第3話 武士の召喚
いつか召喚してみたいと思っていた。 私が生まれ育った所は、昔戦場になった場所で、武士の霊がいると言われていた。 確かに日本中探せば戦場になったと言われれば、どこにでもいるかもしれない。 だから、いつか聞いてみたいことがあった。 今回もしかするとその願いが叶うかもしれない。
「あなたに聞きたいことがあって、召喚したんだ。」
『そうであったか。普通であったら会うことができぬからな』
「そうそう。 聞きたかったのは、どうやって生きる意味を見つけたのかなと思って。」
『なるほどな。いい質問じゃな。 どうして、そなたはそんなことを聞きたかったのかな』
「仕事についたのは、よかったんだけど、生きる意味がんなくて。 ほら、コロナで友達とも会ってないし、恋人をつくってないしさ。 家にいると、撮りためていた録画を見たり、ゲームに夢中になったりして、休日をすごすんだけど、何もしてないなって、すぐに空虚感になるの。 そして、不安になって、緊張するの。 やる気でないし、ずっと寝たくなるし。 こんな無駄なことばかりやってるなと思って。」
『某(それがし)も、ずっとやる気があるわけではないぞ。 宴会とかあれば、その時を楽しく過ごしているしな。 何もいつの時も誰かのために、将来のために過ごす必要はないと思うがの。 しっかり自分ための時間を確保することも大事じゃ。 自分の時間を満足した後に将来のためのことを考えていけばいいのじゃ。 自分の時間を満足せずにどんどん進んでいけば、いつか壁にぶつかることになるからの。 無駄なことなんて1つもないし、そんなことで自分に絶望する必要はないのだよ。 役目というのは自分とどうやって向き合うか、これ1つに限る。 やる気がないのも、寝たいのも単に役目を果たして、疲れているのだよ。 時に休息も大事じゃ。』
「確かにそうだね。 自分を労われるのは自分しかいないんだから、自分のために何かやってもいいんだね。」
『そうじゃ。 自分のことは自分しか分からないから、そうやって自分と向き合いながら生活していくと、自ずと生きる意味が見つかるものじゃ。 ふとした時に降ってくるのだ。 だから焦らずとも、自分の力で進んでいけばいいさ。 某は、いつも戦に出ていて、主のために戦っているんだと思いながら戦っていた。 でもある時、臣下に「あなただからつ いくんです」と言われたことがあって、驚いた。 臣下のために生きていることもいいなと思った。 主のために異国て死んだけど、後悔はしてない。 少し忘れられた時もあったが、今の時代まで覚えてくれていて、こんなに嬉しいことはない。 自分がやってきたことが間違いでなかった。そんなことが分かる日がいつか来ると思うの。』
「うん。分かる日が来ることを信じてやってみるよ。 ありがとう。心が軽くなったよ」
『そうか。それはなによりじゃ。 また呼んでおくれ 。』
「うん。また呼ぶね。」
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あとがき
もし、武士に会うことが出来るのなら、こんなことを話したいなと思い、書いてみた。 きっと、一度は思ったことがあるだろう。
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